金子大地×甲斐翔真
Daichi Kaneko × Shoma Kai
映画『君が世界のはじまり』
難しい“思春期の波間”を
泳いだ共演者対談
映画『君が世界のはじまり』
<あらすじ>
希望と絶望を爆発させる夜が幕を開ける──。大阪の端っこのとある町で、高校生による父親の殺人事件が起きる。その数週間前、退屈に満ちたこの町では、高校生たちがまだ何者でもない自分を持て余していた。授業をさぼって幼なじみの琴子と過ごすえん、彼氏をころころ変える琴子は旧講堂の片隅で泣いていた業平(ナリヒラ)にひと目惚れし、琴子に憧れる岡田は気にもされず、母親に出て行かれた純は東京からの転校生・伊尾との刹那的な関係で痛みを忘れようとする。皆が孤独に押しつぶされていたその夜に、事件は起きた──。
伊尾 × 金子大地 by 甲斐翔真
甲斐(以下、甲):伊尾は見るからに何かを抱え込んでそうな男の子。多分、伊尾と岡田って同じ学校ですれ違ったとしてもお互いに話しかけないし話さないと思うんですよ。岡田にとって伊尾は「東京から来た掴めない子」という印象なんだと思います。
岡田 × 甲斐翔真 by 金子大地
金子(以下、金):岡田はキャラクターのなかで一番「見るからにいい人」。爽やかで悩みもなさそうだし、すごくモテそうだし。でもそう見えるからこそ、実は一番何かを抱えているんじゃないかとも思っていて。そういった見方をした時に、僕個人としては一番好きなキャラクターでした。今まで翔真って“かっこよくて真ん中にいる人”というイメージだったんですが、岡田は女子生徒と話して照れているところとかいい意味でかっこよくないところがあるんですよね。ちょっと自信がなさそうな感じがまたいいんですよ。
お二人は同じ事務所ということもあり
初対面ではないと思いますが、
お芝居での共演は初めてだったとか?
甲:そうですね。映画や芝居で一緒の現場になったのは初めてだったので、役者としてのスイッチが入った彼を見るのは新鮮でした。
金:楽しかったという思い出もありつつ、実はそんなに同じシーンは多くなくて。なので試写で観させて頂いた時に初めて翔真の芝居をしっかり観たんですが、素敵でしたね。
撮影中のエピソードは何かありますか?
金:バンドのシーンは緊張したよね?
甲:そうだね。バンドのシーンは頭を使ったというよりは心を使った気がします。普段自分たちが外に見せないような感情を出さないといけないシーンだったので、その時の芝居は大変だった記憶がありますね。ただ、楽しかったシーンもたくさんありました。対象年齢4,5歳のカートみたいな乗り物に乗って遊んだり…誰だっけ、めちゃめちゃ乗るスピード速かったの。
金:片山ちゃん(片山友希)。
甲:そうそう、めちゃめちゃ速かったよね(笑)。全体的にあそこのシーンの撮影は面白かったね。
金:うん。ただ、“喜怒哀楽、いろんな感情を見せて爆発する”というシーンでもあったので緊張感もあったよね。それでも本当に楽しかった!
映画のポスターにも
「爆発の3秒前」と書いてありますが、
お二人が「高校時代に爆発しそうになったこと」
はありますか?
甲:中高生の時は、なんかよく分からないけどふつふつとイライラが沸いてくることはありました。でも爆発はなかったかな。
金:僕も爆発はなかったですね。
甲:性格的にもあまり怒らないタイプだったし、どこかで「怒ってもしょうがない」と思っているタイプだったので。「怒っても結局自分が損するなー」と。
金:僕たちってそういう世代なのかな?
甲:かな?悟り世代ってやつ?よく言われるよね。
金:特に反抗期のときは大人に対してイライラしてたことって少しはあったと思うんだけど、でもなんか諦めてなかった?
甲:そうだね。「別にイライラしたところで」って思ってたかも。
今と高校時代とでは“悟り方”は変わりましたか?
甲:高校時代であれば諦めていたところを、諦めるんじゃなくて「良い方向に持っていくにはどうすればいいんだろう」と考えるようになったかもしれないですね。反発した心を放っておくんじゃなくて「どうしたらこれが解消できるのかな」と。高校生の時は「楽しいことやって忘れる!」みたいな感覚だったんですけど、そこはあの頃より大人になった今の考え方の変化なのかも。
金:「諦める」というより、翔真が言っているみたいに“怒り”なら“怒り”を素直に持ったうえで解決策を探すことが大事なんじゃないかなと思いますね。
この映画を通して、伝わってほしい想いはありますか?
「よく分からない感情を抱くのは悪いことじゃない」
甲:「高校生でもこんなに悩んでいるんだよ」というのがちゃんと映画の中で描かれているので、それは高校生だけでなく大人の方たちにも発信していきたいです。そしていま現在、高校生で何かに悩んでいる人が居たら「お前だけじゃないぞ!」と伝えたい。高校時代って、悩んでいる自分自身にもイライラしちゃう時期じゃないですか。「なんでこんなことで悩んでるんだ、自分」みたいな。でもそれって当たり前のことだと思うんです。その悩みを両親や友達、恋人に共有できるのであればそうしてほしいと思いますし、そうすることできっといい方向に行く気もします。映画のワンシーンでみんなが自分の抱えていることを言い放つ場面があるんですけど、その時になんとなく「あ、みんな悩んでるんだ」と感じてもらうことができるんじゃないかな。そういった「分からない感情を抱くのは悪くないんだよ」ということが伝われば嬉しいですね。
「“優しさ”ってきっとすごく大事なもの」
金:高校生の方にも共感してもらえる部分がある作品だと思うので、たくさんの方に観ていただきたいです。僕は、この映画を通して「“優しさ”って大事なものだな」と思うことができたんです。「相手に優しくする」って一見上から目線にも聞こえると思うんですけど、すごく重要なキーワードだと思っていて。人に対する“優しさ”を感じとっていただけたらいいな、と思います。
では、お互いの見どころを紹介してください!
金:翔真のこれまでの出演作を見たことがある人が見たらすごく驚くかもしれません。僕自身、翔真との共演は今回が初めてだったんですが、ずっと「かっこよくて男気のあるイメージ」だったんです。でも、岡田はちょっと抜けていて照れ屋で女の子に慣れていない感じがあるんです。絶対にモテるのに、自分がモテていることにすら気づかない…というような(笑)。その感じがすごく絶妙で岡田を好きになりました。
甲:伊尾の見どころはめちゃめちゃありますよ。本当に岡田とは180度違う役。「金子大地の持っているものが存分に発揮されている役だな」と感じましたし、青春映画のはずなのに1人だけR指定な存在なんですよ(笑)。でも、それがこの映画の一つのエッセンスにもなっていて、伊尾が入ることによって作品のバランスが取れているんだな、という印象を受けました。金子大地のR指定のかかった芝居も観てください(笑)。
金:なんか嫌だなそれ(笑)。
甲:一人だけ毛色が違うんだよね(笑)。大人…?“もがき”とか?「金子大地のもがき」いいんじゃない(笑)?
金:あはは、ありがとう(笑)。
最後に映画の見どころをお願いします。
金:「希望と絶望、爆発の3秒前」ってゆう感じだよね(笑)。この映画って全員が主人公なんじゃないかと思える作品だと思うんです。それぞれ全然違うことを抱えた高校生が集まって、それぞれの世界がはじまっていく…まさに『君が世界のはじまり』という感じです。
甲:本当にそうだよね。題名通り。めぐり逢いがその人を作っているというか。岡田なんて、普通に生きていたら絶対に伊尾とは会わないと思うんですよ。「どこで誰と出会うのか、いつどこで誰に影響されるのかは分からないんだ」と思える作品だと思います。
金:それぞれ違う悩みを抱えているけど、ショッピングモールで一夜を一緒に過ごすことで、その“悩み”自体が青春になっていくんだよね。青春と分かっていて青春している。そんな感じが伝わると思います。
甲:そうそう。みんなの悩みが青春に変わる瞬間を観て欲しいです。
詳しくはFAST公式Twitterにて
映画『君が世界のはじまり』
2020年7月31日(金)テアトル新宿ほか全国ロードショー
原作/監督:ふくだももこ 脚本:向井康介
出演:松本穂香 中田青渚 片山友希 金子大地 甲斐翔真 小室ぺい
板橋駿谷 山中崇 正木佐和 森下能幸 億なつき 江口のりこ 古舘寛治
金子大地
1996年9月26日生まれ。
父の再婚相手の暮らす大阪に東京から引っ越してきた、難しく絡まった心情の間でもがく伊尾を演じる。
甲斐翔真
1997年11月14日生まれ。
学年で指折りの人気者だが本人は気にしていない、愛される鈍感キャラでありながら繊細な気持ちを秘めた岡田を演じる。
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
金子大地ヘアメイク:Taro Yoshida
金子大地スタイリスト:山田陵太
甲斐翔真ヘアメイク:青山佑綺子
甲斐翔真スタイリスト:山本隆司
インタビュー・記事:満斗りょう